トウークロメとはフランス語でオールメッキのことです。全身キラキラと輝く自転車は美しいものです。エルスやサンジェなど多くの名車と呼ばれる自転車で使われています。でもその再生のためにはとてつもなく手間のかかる作業が必要です。
新車の場合はフレームを作る前にパイプ状態であらかじめピカピカに磨いておいて、さらにフレームになってから隅々まで磨き上げなければなりません。それはそれで手間のかかることなのですが、古くなってブツブツと錆びたオールメッキフレームを元通りのピカピカにするのは半端な作業ではありません。
まずはもともとのメッキを剥離することから始まります。これはメッキ屋さんで処理していただくのですが、この時点で多くフレームはメッキの下で腐食が進行して想像以上にダメージを受けていることが判明します。錆がひどい場合はパイプを押しただけでへこむほど錆が広がってしまっていて、パイプの差し替えをしなければならない場合もあります。そこまでいかなくてもブツブツの穴は深く拡大していることが多く、なめらかな表面を取り戻すためには一つひとつの小さな穴をローで埋めていく作業が必要になります。ブツブツの穴はとても深く一度埋めたと思っても再メッキをかけると浮き出てくることもあり、それが広範囲に広がっている場合はとても厄介な作業になります。
パイプの錆が補修できたら後はひたすらに研磨です。自転車のフレームのようなパイプの集合体は機械を使うことができない部分が多すぎて、その作業のほとんどは布ヤスリを使った手作業になってしまうのです。粗い番手から徐々の番手を上げていきますので手作業でフレームを磨くと最低1ヶ月はかかります。ですから研磨を職業とするメッキ屋さんでも引き受けてはもらえません。当店では研磨作業に従事する学生アルバイトを確保できるようになりました。おかげでかなりの数のフレームの再メッキを手掛けております。
昨年レストアを行ったアレックス・サンジェのタンデムはパリの本家サンジェでも断られたものを当店で再メッキしたもので、これはその春に就職が決まったアルバイト学生が卒業までの約2ヶ月をかけて研磨したフレームなのです。まさしく出色の出来栄えでした。
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